顧問医師より

「アンケートの集計結果が出ました」

 遅くなりましたが、昨年ご協力いただきましたアンケートの集計結果を以下にご報告します。その節は、ありがとうございました。

2007年4月21日
顧問医師  田中あけみ

II型患者様の経過

1.重症型と軽症型について


  知能が次第に悪くなっていく「重症型」とそうではない「軽症型」とに分けられました。重症型は41名、軽症型は20名でした。発達が少し遅かったり不器用であったりしても、それが知能の問題でなく体が動きにくいことが問題である場合は、軽症型とみなされます。軽症型では年長になっても知的レベルが低下していくということはありません。
  症状の始まりは、軽症型では3〜6歳ころに関節が曲がっているとか伸びないということが多いですが、重症型では言葉の発達が遅れるということが多いです。

2.重症型の症状の始まりと進行


  普通、子供が「マンマ」、「ワンワン」というような意味のある単語(一語文)を言い始めるのは、1歳から1歳半のころです。重症型の中で一語文の始まりが明らかに遅れた人は37%あり、やや遅れた人を合わせると76%ありました。さらに、明らかに遅れた人の6割が、年齢が大きくなっても二語文(2つの単語が続いて文章になるもの)も習得できませんでした。これに対して、一語文の始まりが全く正常であった人は、全員が二語文もしゃべれるようになっていました。このように、重症型という人の中でも、より軽い人、より重い人があり、症状の始まり方でおよその推測ができるようでした。
  重症型の子供が5,6歳を過ぎると、知能の発達が横ばい状態になります。そして、10歳近くになると、できていたことがだんだんできなくなる、すなわち退行ということが起こってきます。だんだんと言葉が減って、会話ができなくなります。痙攣が起こるようになり、次第に歩けなくなり、寝たきり、食べられない、というように症状が進行します。

3.骨髄移植の効果


  軽症型の人では20名のうち4名、重症型の人では41名のうち11名の患者様が骨髄移植を受けていました。
  皆様もご存知のように、骨髄移植をすると、肝臓や舌が小さくなったり、皮膚や関節が柔らかくなったりといった効果があります。しかし、神経の症状や知能、骨には効果がないといわれています。
  脳の効果の評価はとても難しいです。骨髄移植をしても脳の症状は進行します。でも、骨髄移植をしたから、進行の仕方が緩やかになっているのかもしれません。しかし、同じ子供で「したとき」と「しなかったとき」とを比べることは不可能です。ですから、「した人」と「しなかった人」をたくさん集めて比べなければいけません。今回のアンケートを集計して比べてみました。
表に結果をまとめています。

表:骨髄移植の効果
 否移植グループ移植グループ
n(人数)75
暦年齢(月)100-145100-145
平均移植生着月齢(幅)61.2 (54-72)
一語文獲得月齢(平均)17.117.0
言葉の減少(人数/n)6/71/5
言葉の消失(人数/n)3/71/5
痙攣発症(人数/n)1/71/5
歩行不能(人数/n)1/70/5


  まず、移植した人としなかった人の年齢層を100ヶ月から145ヶ月まで(8歳4ヶ月から12歳1ヶ月まで)の人にそろえました。年をとれば皆悪くなりますので、比べるためには、同じくらいの年齢の人で比べなければいけないからです。そうすると、移植しなかった人は7名、移植した人は5名になりました。この7名と5名を2つのグループとして比べました。一語文を言うようになった年齢も両方とも17ヶ月(1歳5ヶ月)で、重症度も同じです。5名の骨髄移植をした年齢は、平均61.2ヶ月(5歳1ヶ月)で4歳から6歳の間に受けていました。
  8歳(96ヶ月)を過ぎると、多くの重症型の人は、言葉の減少や消失といった発達の退行が見られるようになります。呼吸が苦しくなったり、いびきがひどくなったりするのもこのころです。移植をしなかった人は、7名中6名に言葉の減少があり、7名中5名が意味のある言葉を言えなくなっています。これに対して、移植した人では、そういう人は5名のうち1名しかいませんでした。骨髄移植によって病気の進行が緩やかになっているように見えます。これは、骨髄移植によって脳障害の進行が抑えられているのかもしれませんし、あるいは、骨髄移植をすると舌が小さくなって呼吸がしやすくなるので、体が楽になって、しゃべりやすいからしゃべれるのかもしれません。

III型患者様の経過

  III型の人は、17名でした。骨髄移植を受けた人は、1名だけでした。III型の症状の始まりは、言葉の遅れよりも多動などの行動異常が最も多いです。ほぼ全員が、1歳半までに一語文を言えるようになっており、二語文もしゃべれるようになっています。これを見ると、症状の始まりはII型の重症型の人より少し遅いようです。しかし、言葉の減少が6〜8歳ころ、言葉の消失が10〜12歳ころとII型重症型の人とほぼ同じでした。しかし、痙攣や睡眠障害の治療は、II型重症型よりも難しいです。
  10歳を過ぎても言葉がしゃべれている人は、13名中2名でした。そのうちの一人は骨髄移植を受けていました。この人は骨髄移植を受けたからしゃべれているのか、受けていなくてもしゃべれているのか、判断はできませんでした。
  5月から、イソフラボンの臨床研究が始まります。今回のアンケートの結果は、イソフラボンの効果判定に役立つと思います。いろいろな検査がありますが、ご協力をよろしくお願いします。